ダイバーシティ&インクルージョンの考えを取り入れてマネジメントをする会社が増えてきています。
ダイバーシティ&インクルージョンは、多種多様な社員全員が社内で気持ちよく働けることや、会社にイノベーションをもたらすものとして、いま注目されているのです。
今回は、会社でダイバーシティ&インクルージョンの考え方を取り入れることの重要性や、取り入れる際のマネジメント側の注意点について解説します。
ダイバーシティ&インクルージョンとは
ダイバーシティ&インクルージョンはひとまとめに使われていますが、実は 「ダイバーシティ」と「インクルージョン」には明確な違いがあります。
- ダイバーシティ(diversity):多様性
会社などの組織において、年齢、性別、国籍、障害の有無や、働き方、価値観の違いなど、多様な背景を持つ人財を登用すること。
そして、そういった人財の意見を聞いたり、尊重し合い、それぞれが持つ能力を活かすことで、企業の価値を創造すること。
- インクルージョン(inclusion):包括
全社員(従業員)について、それぞれの能力や経験、価値観や考え方が認められ、それが仕事に充分に活かされている状態のこと。
そして、全社員には平等に仕事に参画したり、貢献をする権利が与えられていること。
上記2つをあわせて、多種多様な人財を登用しながらも、すべての社員が会社の中で自分の能力や経験、考えを活かし、活躍できることをダイバーシティ&インクルージョンといいます。
具体的には以下のような人たちが会社で充分なパフォーマンス発揮できる状態を目指します。
- 女性
- 外国人
- 高齢者
- 障害のある人
- LGBTなどマイノリティーな人たち
- 時間的制約のある人(育児・介護)
ダイバーシティ&インクルージョンの重要性
従来までの日本企業は、ダイバーシティ&インクルージョンとは逆の考え方で経済発展をしてきた、と言えるでしょう。
社内で組織統一ができるよう、同じ考え方・価値観を社員で共有し、一丸のチームになれることを重視しました。
しかし20世紀とは社会が大きく変化した今、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方は、今後のビジネスで成功する要素になるといわれています。
そのポイントを3つ紹介します。
- 人材不足
- グローバル化
- 若者のマインドシフト
それぞれについて解説します。
人材不足|少子高齢化による労働人口の減少
少子高齢化は日本の深刻な課題の一つです。
2013年には227万人だった労働人口は、2038年には142万人にまで減少するといわれています。(2018年 経済産業省資料)
そこで、女性の社会参画を推進したり、定年を引き延ばしにしたりするなどの対策が国をあげて行われてきました。
また外国人の受け入れも国としての施策の一つです。
会社がダイバーシティ&インクルージョンの考え方であることは、深刻化する人材不足の課題をクリアする可能性を高めると言えると思います。
グローバル化|他国でビジネスチャンスを拡大
インターネットの普及も追い風となり、海外企業と連携したプロジェクトや、海外での新規市場開拓などのビジネスのグローバル化が今後も衰えることなく進んでいきます。
国籍を問わず多種多様な人とうまくコミュニケーションをとり、価値観を受け入れることはビジネスチャンスも広がっていきます。
また、先程述べた労働人口の減少に伴う、労働力不足の問題解消にもつながっていくでしょう。
若者のマインドシフト|ワークライフバランスへの理解
ワークライフバランスが重要視される現在、とくに若者は「仕事よりもプライベート」と考えている人が増えました。
ゆとり教育世代が社会進出したことや、インターネットで情報共有のスピードがあがったことなど原因はさまざま考えられます。
実際に入社をして数年の間もないときに退職や転職を行う若者は後を絶ちません。
これまでとは違った考え方の人を会社にうまく取り入れ、活かしていくには、従来のように、会社全体で同じ考えや価値観を共有させるの、というのは悪手となりえます。
日本の若者が会社で充分なパフォーマンスを発揮するためには、ダイバーシティ&インクルージョンの考えが必要です。
マネジメントのポイントは?|「変革の力」ととらえる
ダイバーシティ&インクルージョンは、近年の社会課題に太刀打ちする企業戦略の側面をもつのは確かです。
しかし経営者側の視点からみれば、ダイバーシティ&インクルージョンは「変革の力」ととらえることがポイントとなるでしょう。
- 何か新しい商品やサービスを開発するとき
- 硬直してしまった業務に 新しい風を吹き込みたいとき
こういった小さな場面から、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方を取り入れることが重要です。
たとえば、何か新しいアイディアを出したいとき。
その場では「一切の否定をしない」というルールをつくり、参加メンバー全員でブレインストーミングをする。
こんなことも、ダイバーシティ&インクルージョンへの 一歩になります。
さまざまなバックグラウンドをもつ人の多様な考え方を受け入れることは、新しい視点で物事を考えることでもあり、最終的には組織の変化につながります。
注意しなければいけない点
ここで、ひとつ注意点について考えておきたいと思います。
ダイバーシティ&インクルージョンは、万能ではないという点です。
すでに解説したように、従来の日本は社内で考えや価値観をしっかり共有してからビジネス展開をしてきました。
それは、「変革の力」が必要ない場面では、その方がビジネスとして成功するからです。
この図は縦軸が「イノベーションによる経済的価値」を、横軸が「チームの多様性」を表しています。
一見してわかるように、ダイバーシティ&インクルージョンは、ときに高いイノベーションで経済価値を生み、
しかしながら平均的には、従来の日本のような チームが一丸となった方が経営効果は高いことを示しています。
マネジメント側は、このダイバーシティ&インクルージョンの特性をふまえて、取り入れ方を検討しなければいけません。
まとめ
ダイバーシティ&インクルージョンは多種多様な人材を登用しながらも、すべての社員が社内で自分の能力や経験、
考えを活かして活躍できる状態を目指すものです。
今後の社会情勢をみてもダイバーシティ&インクルージョンは、
- 人材不足
- グローバル化
- 若者のマインドシフト
の課題をクリアする切り口になります。
ただしマネジメント側には、取り入れ方を考えるにあたって冷静な視点が必要でしょう。
ダイバーシティ&インクルージョンを「変革の力」ととらえ、ポイントを絞って小さい場面から取り入れることが重要です。